コラム

吉田学吉田学

税理士にとってはの経営者保証のガイドライン!どう捉えますか?

少しずつですが、「経営者保証に関するガイドライン」の認知度について、広がりつつあるのでしょうか・・・。といっても、まだまだ認識すらされていない経営者も多いと聞きます。

中小企業同友会の調査によりますと、保証をはずせたのは4%程度だということです。それ以前に経営者保証ガイドラインを「知らない」という方が31.6%だったそうです。

同友会の会員企業で約30%なのですから、全国的には、もっとこの水準は高いのではないでしょうか。まだまだ浸透すらしていない!ということですね。

経営者への意識づけ・・・という意味においては、やはり、顧問税理士さんの影響が大きいと思います。積極的に経営者保証について、顧問先に案内等をしてくださると、それなりに浸透していくと思います。

ただ、ここで一つの問題が発生します。

もし、顧問先から「それでは、先生、連帯保証を外したいのでお手伝いしてください」と言われたとき、どうするのか・・・?

この際、顧問税理士の対応としては、以下の3通りがあると想像いたします。

 1.「できません」といって断る。
 2.「お手伝いしましょう」といって協力する。
 3.「専門家を紹介します」と言う。

もちろん、顧問税理士の先生が顧問先の力になるのがベストです。しかしながら、全ての税理士先生が経営者保証ガイドラインに精通しているわけではありません。

そういう意味では、3の方向性もOKでしょうね。しかしながら、いったい誰を紹介すればいいのか、とても難しいと思います。

まず、大前提として、以下の点について、知ってほしいと思います。経営者保証を外すための、経営者がすべき3つの視点です。

<以下の経営状態であること>

 1.法人と経営者との関係の明確な区分・分離
 2.財務基盤の強化
 3.財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

たとえば、1の点についてですが、これはどういう判断基準になるのか、相当、分かりにくいですね。この点について、ガイドラインは一つの方向性を以下のように説明しています。

「こうした整備・運用の状況について、外部専門家(公認会計士、税理士等をいう。以下同じ。)による検証を実施し、その結果を、対象債権者に適切に開示することが望ましい」。

つまり、「税理士さんが検証を実施して、その結果を銀行に開示して判断する」という流れです。

ガイドラインには、外部専門家(会計士、税理士、弁護士など)という文言が何度も登場いたします。さらに、「税理士は、顧問税理士を含む」という文言もQ&A集等には書かれています。

経営者がガイドラインの内容を知れば、やはり、先ずは顧問税理士の先生にご相談することになるのが自然の流れだと思います。

そこで、「やはり、当事務所ではではお手伝いできません」となったら、、、社長さんは、他の税理士や専門家にご相談することになるのでしょう。

また、経営者保証を外せる会社さんの場合は、やはり、それなりの業績を積み上げている企業さんになる可能性が高いです。つまり、「業績の良い顧問先」ということです。

そういう顧問先が他の税理士事務所に相談しにいくことになるかもしれない、ということです。

この状況は決して好ましくないですよね・・・。

また、この逆のパターンだってあり得ます。つまり、「経営者保証に関するガイドラインに強い税理士事務所」というアピールができれば、顧問先以外の企業さんからのご相談を受ける可能性もある、ということです。

当然、その企業さんには顧問税理士さんがいらっしゃるでしょうから、それをきっかけに顧問税理士を変える・・・というシーンも、もしかしたらあるかもしれません。

もし、こうなったら・・・、何だか横取りする(される)みたいで、お互い気分がよくありませんよね?!

もちろん、ガイドラインをきっかけとして、税務顧問ではなく、「財務顧問」契約を結ぶことは可能だと思います。

これは、見せ方やアピールの仕方次第だと思います。

経営者保証のガイドラインに沿った経営状況にするには、それなりの財務状況であることが重要ポイントです。

ガイドライン(財務基盤の強化 )においては、「経営者個人の資産を債権保全の手段として確保しなくても、法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る財務状況」であることとしています。

つまり、相談をうけた時点においては、まだまだ先ほどの3つの経営状況に達していなかったとしても、たとえば、、、「今後3年で経営者保証が外せるような経営状況にしましょう!」という財務指導のための顧問契約は可能だと思います。

それなら、税務顧問を横取りするようなことはなくなります。また、当然のことですが、税務顧問契約をしたとしても、その企業の顧問税理士さんの協力があった方がスムーズに事が運ぶはずです。

今後、こういうシーンが発生する可能性は断じてあり得ない!とは否定できないのではないでしょうか。。。

もちろん、経営者保証が全く普及せずに、「あれはいったい何だったんだ?」ということもあり得るでしょう!(個人的にはそう思っていませんが!!)

要は、税理士の先生方が、このガイドラインをどう捉えるか?だと思います。関心がなければ、それはそれでOKだと思います。税理士業は、ガイドラインが本業ではありませんものね。

ただ、、、私は思うのですが、現在、民法の改正等も検討されていて、この連帯保証制度については、大きな転換期だと思っています

よって、中小企業を支援するあらゆる分野の専門家(税理士だけに限らず!!)は、やはり、このガイドラインを無視できないのではないかと勝手に思っています!!

そんなことないでしょうかね?
ちょっと大袈裟でしょうか。。。

最低でも、「ガイドラインとは何なのか?」、「どういうことが書かれているのか?」、「判断基準はどうなっているのか?」、「公的金融の対応はどうなのか?」、「保証協会はどう対応しているのか?」など、最低限の知識についてはしっかりと知ってほしいです

顧問先から相談されたときに、プロフェッショナルの段階までノウハウを有していなくても、ある程度の基礎知識を有していることが重要だと考えます。

そして、「当事務所ではこの分野のノウハウが乏しいので、この分野に強い税理士(会計士、コンサルタントなど)を紹介します。社長!一緒にご支援しますからね!」という流れが自然ではないでしょうか。先ずは、最も信頼の厚い顧問税理士さんが相談に乗ってあげてほしいと思います。

未だ「経営者保証に関するガイドライン」を読んだことがないという税理士さんがいらっしゃいましたら、是非、こちらから読んでみてください。
http://www.zenginkyo.or.jp/news/2013/12/05140000.html

3回読めば、何となくわかります。
5回読めば、全体像が把握できるはずです。
10回読めば、不明な点が明らかになると思います(苦笑)。

是非、読んでみてくださいね。

このコラムを書いた人

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吉田学 氏

Manabu Yoshida

  • HP

マイベストサポート代表。財務・資金調達コンサルタント。インブルームLLP所属。日本FP協会認定フィナンシャル・プランナー。神奈川大学法学部卒。

著書に「究極の資金調達マニュアル(こう書房)」「社長のための資金調達100の方法(ダイヤモンド社・共 著)」「税理士・会計事務所のための資金調達ガイド (中央経済社)」等がある。

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